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方言調査

『言語と文化—言語学から読み解くことばのバリエーション』(くろしお出版)第4章を中心に、お話します。言語内変異は数多く存在します。「認知言語学」ゼミなど、これまでのゼミでは、言語普遍性と言語固有性を多様な視点から眺めてきましたが、言語固有性にも複数の要因―すなわち、言語内要因と社会的要因―が存在することを認識しなければなりません。言語内要因と社会的要因が関わり合っている、その顕著な例が方言です。本ゼミでは、言葉がどのようにして生まれ、伝播し、そして変化してゆくのか、こうした歴史的変遷の問題を社会言語学、とりわけ言語地理学・方言地理学の視点から論じます。上述の通り、言語内変異には複数の要因がありますが、本ゼミでは、主に「革新の中心」(center of innovation)という概念から捉えることにします。本ゼミでは日本語の変異研究に焦点を合わせながら解説しますが、「革新の中心」を理解するには、たとえば、アメリカ英語はイギリス英語より古く、カナダで話されているフランス語はフランスのフランス語より古いという事実を想起すると良いでしょう。また、本ゼミでは、東条操の『方言区画論』にも言及しますが、「革新の中心」という概念をより深く理解するために、柳田國男の『方言周圏論』で展開されている概念に従い言語分析を行なうことにします。

1. 方言調査 1 [URL]

2013-03-04 13:35:00 ID:155

くろしお出版による南雅彦先生(サンフランシスコ州立大学教授・国立国語研究所客員教授)の講義配信、「方言調査」第1回目の講義です。

【本講義の内容】
・イントロダクション
・「言語内変異」
・「言語変化」
[本講義では、まず最初に言語内変異の要因(例:年齢・社会階級/地位・職業)をどのように捉えるのかを考えます。そこから一歩進んで、人口が1000人という架空の村を使いながら、長い時間の経過の中で、その村がどのように変化してゆくのか、想定できる言語変化を解説します。言語変化を構文的側面,語彙的側面から捉える必要性も論じます。]

【キーワード】
言語内変異の要因(例:年齢,地理,社会階級・社会的地位,職業,教育),言語変化(例:構文的側面・語彙的側面),語彙的側面(概念の違い・発音の違い・多雪地帯、エスキモーの言葉に認められる風位語彙の細分化・助詞の違い)

【参考文献】
柳田國男(1930)『蝸牛考』刀江書院

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2. 方言調査 2 [URL]

2013-03-04 13:36:54 ID:156

くろしお出版による南雅彦先生(サンフランシスコ州立大学教授・国立国語研究所客員教授)の講義配信、「方言調査」第2回目の講義です。

【本講義の内容】
・「なぜ方言調査を行うのか」
[「方言への旅は時間への旅である」という言葉にロマンを感じませんか。本講義では、文献等に残る過去の言語使用と地域方言から推測可能な過去の言語使用をどのように捉えるかを解説します。比較方言学、方言区画論、等語線といった概念も説明します。]

【キーワード】
文献 vs. 方言(中央語 vs. 地方語,上流階級・知識人 vs. 庶民,絶対年代 vs. 相対年代,書き言葉 vs. 話し言葉),音声言語 vs. 書記言語,共時相 vs. 通時相(例:[顔]の歴史,「カオ」・「ツラ」,上流階級 vs. 庶民),書き言葉 vs. 話し言葉,比較方言学(本土方言[五母音体系]と沖縄方言[三母音体系]の比較[例:「オモテ」vs.「ウムチ」]),東条操の『方言区画論』,等語線(isogloss),文献と方言に認められる変遷順序の矛盾,文献に基づく変遷順序 vs. 方言に基づく変遷順序(例:「くすりゆび」「べにさしゆび」)

【参考文献】
小林隆(2006)『方言が明かす日本語の歴史』岩波書店
Shibatani, M.(1990). The languages of Japan. Cambridge, UK:Cambridge University Press. (p.192を参照)

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3. 方言調査 3 [URL]

2013-03-04 13:38:39 ID:157

くろしお出版による南雅彦先生(サンフランシスコ州立大学教授・国立国語研究所客員教授)の講義配信、「方言調査」第3回目の講義です。

【本講義の内容】
・「方言調査:地域的なバリエーション」(1)
[本講義では、東西対立の発生に関して考えられる3パターンをまず提示します。それから、東西対立型(AB分布)と周圏分布型(ABA分布)の代表的な例を解説します。]

【キーワード】
方言の東西対立のパターン(例:「マック」 vs. 「マクド」,「片付ける」 vs. 「直す」),方言区画論,等語線,東西対立型(AB分布 例:西日本「カライ」 vs. 東日本「ショッパイ」,西日本「オル」 vs. 東日本「イル」),相補分布,周圏分布型(ABA分布 例:「蝸牛」,女性を表す「メ」「ヲミナ」「ヲンナ」「オナゴ」「オンナ」)

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4. 方言調査 4 [URL]

2013-03-04 13:39:51 ID:158

くろしお出版による南雅彦先生(サンフランシスコ州立大学教授・国立国語研究所客員教授)の講義配信、「方言調査」第4回目の講義です。

【本講義の内容】
・「方言調査:地域的なバリエーション」(2)
[本講義では、「あさっての翌日(明々後日)」「あさっての翌々日(明々々後日)」をどう呼ぶのか(シアサッテ vs. ヤノアサッテ vs. ササッテ)を例に取りながら、言葉の伝播の仮説を立て、検証します。また、歴史的変遷ばかりでなく、人々がこれらの言葉、たとえば「サアサッテ」や「シアサッテ」をどのように捉え、その翌日の名称にどのような影響を与えたのか、認知的解釈を考察します。]

【キーワード】
交互分布型(ABAB分布 例:「襖(フスマ・カラカミ)」),全国的複雑分布型(「メダカ」「お手玉」「おたまじゃくし」),太平洋側(シモヤケ)vs. 日本海側対立分布型(ユキヤケ),全国共通分布型(例:「雨」),飛び火的伝播,言葉の伝播(例:「あさっての翌日/翌々日」を表す言葉),隣接意味への滲み出し

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5. 方言調査 5 [URL]

2013-03-04 13:41:06 ID:159

くろしお出版による南雅彦先生(サンフランシスコ州立大学教授・国立国語研究所客員教授)の講義配信、「方言調査」第5回目の講義です。

【本講義の内容】
・「役割語(地域方言 社会方言)」
・「関西と東京の語彙の相似」
・「方言調査:地域的なバリエーション」
[前回の講義では、「あさっての翌日(明々後日)」「あさっての翌々日(明々々後日)」の語彙の解説をしましたが、東京だけが飛び地のような形で、周囲の東日本地域とは異なることがわかりました。本講義では、社会方言としての役割語の中で「博士語(老人語)」と呼ばれている語彙から、関西方言と東京で使用されている言葉(標準語)における相似性とその理由を解説します。最後に、地域方言をどのようにして調査するのか、具体的な調査方法に言及します。]

【キーワード】
役割語(博士語・標準語・西日本方言・東日本方言),語彙の飛び地,「ヤ」「イエ」「ウチ」(歴史的変遷),方言調査の方法(「なぞなぞ」式,翻訳式)

【参考文献】
佐藤亮一(1979)「方言の分布」徳川宗賢(編)『日本の方言地図』pp.1-52. 中央公論社
真田信治・岸江信介・中井精一・鳥谷善史(2009)『大阪のことば地図』和泉書院
徳川宗賢・真田信治(1991)『新・方言学を学ぶ人のために』世界思想社

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6. 方言調査 6 [URL]

2013-03-04 13:42:08 ID:160

くろしお出版による南雅彦先生(サンフランシスコ州立大学教授・国立国語研究所客員教授)の講義配信、「方言調査」第6回目の講義です。

【本講義の内容】
・「『方言周圏論』『蝸牛考』(柳田1930)」
・「『方言周圏論』アホ・バカ アンケート調査」
[『方言周圏論』は『蝸牛考』とも呼ばれ柳田國男が命名し提唱した仮説です。『方言周圏論』を理解するために、本講義では、松本修(1996)『全国アホ・バカ分布考:はるかなる言葉の旅路』を例に取りながら方言調査の方法を再検討します。アホ・バカ言葉の歴史的変化をたどれば「バカ」が古く「アホ」が新しい言葉であることが理解できるのですが、さらに定型表現・常套句からもそうした歴史的な流れが理解可能であることを解説します。]

【キーワード】
柳田國男,蝸牛考,方言周圏論,波状説(wave theory),「アホ」vs.「バカ」(東京主地域 vs. 大阪主地域),琉球方言圏における「フリムヌ」「フリムン」と「惚れ者」,「呉音」vs.「漢音」,「アホ」「バカ」と定型表現

【参考文献】
柳田國男(1930)『蝸牛考』刀江書院
松本修(1996)『全国アホ・バカ分布考:はるかなる言葉の旅路』新潮社(太田出版 1993)

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7. 方言調査 7 [URL]

2013-03-04 13:43:04 ID:161

くろしお出版による南雅彦先生(サンフランシスコ州立大学教授・国立国語研究所客員教授)の講義配信、「方言調査」第7回目の講義です。

【本講義の内容】
・「大阪人が共通語と思い込んでいる『隠れ関西弁』」
・「その他の方言」
・「ネオ方言」
[本講義では、大阪方言から話を進めますが、これまで解説してきた語彙の歴史的変化の総復習が中心です。さらに、方言と標準語が接触することによって生じた新たな混交体系であるネオ方言について解説します。]

【キーワード】
大阪弁,音声交替(例:「シチ」→「ヒチ」,「シク」→「ヒク」),[m]音と[b]音の音声交替(例:「コムラガエリ」→「コブラガエリ」,「ヘミ」→「ヘビ」),同音衝突(例:「コワイ(=疲れた)」vs.「コワイ(恐ろしい)」),相補分布,「居る」という意味の「イル・オル・アル」,(半島など)辺境に残る古語,ネオ方言(例:「コーヘン(来+ヘン・ナイ)」,「デキヘン(出来+ヘン・ナイ)」,「オキヘン(起き+ヘン・ナイ)」),方言と標準語の接触・干渉,逆行同化(デキ+ヘン→デケ+ヘン),新方言

【参考文献】
小林隆(2006)「隣接意味への滲み出し」『方言が明かす日本語の歴史』岩波書店

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8. 方言調査 8 [URL]

2013-03-04 13:44:07 ID:162

くろしお出版による南雅彦先生(サンフランシスコ州立大学教授・国立国語研究所客員教授)の講義配信、「方言調査」第8回目の講義です。

【本講義の内容】
・「方言調査再訪」
・「若者語の4分類」
・「言語変化の起こる理由」
・「言語変容」
[「方言調査」ゼミの最後は、「言語と文化」ゼミで解説した若者語の4分類にも言及しながら、言語(発音)変化が起こる理由を解説します。すでに述べた『マクドナルド、関西ではなぜ「マクド」』というトピックに戻って、言語変化の理由を順行同化/逆行同化という概念を導入しながら説明します。さらにはピジン・クレオールを含めた言語変容、日本から海外に移民した人たちの言語使用も検討します。]

【キーワード】
若者語の4分類(「一時的流行語」,「コーホート語」,「若者世代語」,「語形変化」),発音労力の軽減(例:順行同化,逆行同化),言語体系の合理化・単純化,共通語化,言語内的要因 vs. 言語外的要因,ピジン,クレオール,2方言使用,過剰般化,化石化,海外の日本語使用(移民),単純化,借用語,古い語彙・表現の保存

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