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「する」言語と「なる」言語を考え直す

英語と日本語の違いを解明しようとする対照研究は数多くありますが、その中でも自動詞/他動詞の使い分けや、そこから派生する「人間中心/状況中心」といった考え方は、両言語の根底に関わるテーマです。本ゼミでは言語学的なモデルはもちろん、さらに広い概念をも視野に入れ、「する」言語と「なる」言語について考えます。

1. イントロダクション ー英語と日本語の差を根底から考えるー [URL]

2010-07-21 11:11:37 ID:17

「ひとりごとの言語学」に続く、西光義弘先生の新しいゼミテーマは、
「『する』言語と『なる』言語を考え直す」です。

英語では他動詞がよく使われ、日本語では自動詞がよく使われるという傾向があります。
ただし、もちろん英語でも自動詞が使われたり、日本語で他動詞が使われることもあります。
では、それぞれの言語における自動詞・他動詞の役割とは何なのか?

第1回目の講義では、「する」言語である英語と、「なる」言語である日本語の違いについて、
主語を中心に観察してみます。
(管理人)

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2. 主語の違いから見る英語と日本語 ―『坊ちゃん』の英訳を題材に― [URL]

2010-07-23 18:43:44 ID:18

第2回目では、前回取り上げた「英語:無生物主語」/「日本語:人間主語」という傾向を、日本文学の例からも観察します。
夏目漱石の『坊ちゃん』はどのように英訳されているのでしょうか?

そして、人間中心/状況中心というからも英語と日本語の違いを考えます。
魚が釣れたとき、日本語では「つれた!」と言いますが、英語では "He's got one!" と言うそうです。
身近な例についてさらに考えてみるとおもしろいかもしれません。
(管理人)

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3. 人間中心と状況中心 ―国広哲也氏の研究から― [URL]

2010-07-28 17:57:53 ID:19

第3回目の講義では、英語は人間中心、日本語は状況中心という傾向について、国広哲也氏の先行研究を紹介します。

国広氏はそのデータとして、Henri Frei氏の『基本二千文』を使用していましたが、今回はその貴重な原文も紹介します。
かなり古いものですが、日・英・仏語の対照を観察するのに有用な文献とのことです。
(管理人)

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4. 人間中心と状況中心(2) ―John Hindsの研究から― [URL]

2010-08-01 23:42:36 ID:20

第4回目の講義では、引き続き「人間中心」と「状況中心」という日英語の違いを考えます。

今回取り上げるのはJohn Hinds氏の先行研究で、当時ハワイの日本語教師を集めて行われた研究発表会の内容をまとめた文献を紹介します。

「人間中心」/「状況中心」という捉え方は、自然な日本語を教えるうえで、日本語教育の観点からも重視されているようです。

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5. 人間中心と状況中心(3) ―日本文学英訳の例― [URL]

2010-08-05 09:21:55 ID:21

今回の講義ではまず、「人間中心」/「状況中心」という日英語の違いについて、日本文学の英訳を検証。
以前と同様に、夏目漱石の『坊ちゃん』を取り上げて、どう訳されているかを観察します。

また、後半ではこれまでとは違う例外的表現を紹介。
「テープレコーダーを壊してしまいました」のように、日本語では謝罪場面で他動詞を使いますが、なぜこうした言い方をするのでしょうか?
(管理人)

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6. 英語と日本語、さらなる比較 [URL]

2010-08-09 18:09:30 ID:22

これまでの内容をまとめると、英語では「NP1+他動詞+NP2」、日本語では「NP2+自動詞」という傾向が見えてきます。

第6回目の講義ではこのことを踏まえたうえで、人間の参与者がいるかどうかなどさらに細分化した観点から日英語の比較を行っていきます。
(管理人)

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7. 英語と日本語、動詞に注目 ―他動詞文と自動詞文― [URL]

2010-08-12 18:33:54 ID:23

これまでの講義の中で、英語は無生物主語、日本語は人間主語をとりやすいという傾向を見てきましたが、今回は動詞の違いへと視点を移していきます。

動詞に注目しながらこれまでの例文を振り返ってみると、
英語では他動詞、日本語では自動詞が使われやすいということがはっきりします。
(管理人)

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8. これまでのまとめ ―英語と日本語の違い― [URL]

2010-08-18 23:53:32 ID:24

第8回目の講義ではこれまでの内容を大きくまとめ、
動作主と被動者がそれぞれ人間か、無生物かという区分けによって、
英語と日本語の違いについて全体像を示します。
(管理人)

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9. 日本語における例外的な他動詞文 —状態変化主体の他動詞文— [URL]

2010-08-27 13:47:23 ID:25

第9回目の講義では日本語におけるちょっと変わった他動詞文として、
天野みどり氏の研究を参考に、「状態変化主体の他動詞文」について考えます。

「教師に殴られて前歯を折った」のような他動詞文はどういう条件で使用できるのでしょうか?
(管理人)

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10. 他動性の連続体 [URL]

2010-09-01 11:13:50 ID:26

今回は、自動詞/他動詞の使い分けに関連して、意図的なできごとから自発的なできごとまでを連続的にとらえた、「他動性の連続体」という仮説を紹介します。

中でも、「財布を落とした」のように、「責任のある出来事」に対して他動詞を使うという現象は興味深く、言語間での違いも見られます。

例えば、「戦争で息子を亡くした」という言い方に対して、韓国語では場合によって「戦争で息子を殺した」という言い方もできるようです。
(管理人)

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11. 日本語特有の自動詞 —非自発的な自動詞について— [URL]

2010-09-03 18:32:16 ID:27

第11回目の講義では、日本語に特有と言われる「非自発的な自動詞」の例(「決まる」「建つ」「捕まる」「植わる」など)を見ていきます。

また、後半ではこれに関連した日本語の他動詞の特徴として、池上嘉彦氏の先行研究にも触れています。
「燃やしたけれど燃えなかった」のような例から、日本語の他動詞は、英語と違って動作の出だししか表さないことなどを説明します。 

(管理人)

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12. インド諸言語間での他動性の違い ―マラティ語、グジャラティ語、マラヤラム語― [URL]

2010-09-14 10:25:10 ID:28

第12回目の講義では、インド諸言語の他動性を比較します。
今回取り上げているのは、マラティ語、グジャラティ語、マラヤラム語。

日本語で「指を切った」、「おなかを壊した」という他動詞文がありますが、それぞれの言語でも他動詞が使われるのでしょうか。

どうやらその状況において感じる責任の重さの違いから、他動性にも言語間で差が出てくるようです。
(管理人)

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13. 言語現象の裏に何があるか ―社会心理学的視点からの考察― [URL]

2010-09-28 16:33:09 ID:29

これまでの講義で言語学的な側面から自動詞/他動詞の比較をみてきました。
今回はその現象の裏にはどのような要因があるのかについて、
社会心理学的視点から考察していきます。

行動の原因が、個人に帰属するのか、それとも状況に帰属するのか、
また、意図性と責任というのはどのようにとらえられるのかなど、
言語間で自動詞と他動詞の使われ方が違う背景について、深部に迫ります。

参考文献として、Malle, Bertram F. and Joshua Knobe、佐藤琢三などを取り上げています。

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お答えの続き
言語学でいわれている区別と共通のものがあると推測されますが、それぞれのラベルの厳密な定義やモデルなどは提案されていませんので、断定することはできません。これはこれからの課題だと思います。東洋人の包括的認知と西洋人の分析的認知の区別はあくまでも知覚実験に基づいたもので、いまだ大雑把なラベル付けだと考えられます。この違いの裏の要因などを解明する必要があります。
2012-02-07 17:12:11 nisimitu / ID:25

ご質問ありがとうございます。文化心理学は社会心理学者のなかでも文化によって実験の結果が違うことに注目した人たちが提唱し始めたものです。わかりやすい入門書としてはRichard NisbettのGeography of Thought<邦訳『木を見る西洋人 森を見る東洋人思考の違いはいかにして生まれるか』
リチャード・E・ニスベット (著), 村本 由紀子)を読むのが手っ取り早いです。知覚および認知の様式が文化によって異なることを実証しているので、言語学で言われていることの実証的な支えを果たしているといえるでしょう。
2012-02-07 17:10:20 nisimitu / ID:24

社会心理学は文化心理学とどのように違うのですか。また、文化心理学が日本語の言語現象を見るのに役だつとすればどのような場合が考えられますか。また、文化心理学の知見で、例えば東アジアは包括的認知、西欧圏は分析的認知というのがありますが、これは今まで言語学の範囲で言われていた、状況中心と人間中心、するとなる、全体と個などと比べて、どのような新しさがあるとお考えですか。
たくさん聞いてしまいましたが、よろしければ是非先生のご意見をお聞かせください。
2011-03-04 21:43:26 京 / ID:23

14. 「責任」の解明と、他動性の連続体の再考 [URL]

2010-09-30 17:34:36 ID:31

これまでの講義から、他動詞の使用にはその行為に対する責任の度合いが関係していることが示唆されてきました。
今回は、この責任について解明しようとしたWeiner, Bernard氏の研究を取り上げ、どういう条件で責任が発生するかを見ていきます。

こうした考えを踏まえ、後半ではマラティ語における他動性の連続体を再考。
言語類型論だけでなく、意図性や責任の概念という認知過程について吟味します。
(管理人)

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15. 他動性の連続体を検証 ―マラティ語の無生物主語の例― [URL]

2010-10-04 16:14:37 ID:32

前回解説した他動性の連続体の再考に関して、今回の講義ではマラティ語において無生物主語で他動詞が使われる例を観察します。

具体的には、主語が天候、乗り物、病気や死、芸術作品、そして出来事の場合について検証。
どのような考察が得られるのでしょうか?
(管理人)

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16. 他動性と責任概念(最終回)―言語学と社会心理学の融合― [URL]

2010-10-07 13:53:42 ID:33

「『する』言語と『なる』言語を考え直す』の最終回。

今回は、これまで見てきた「他動性の連続体」という一般化的な仮説に対し、それぞれの民族が他動性をどのようにとらえているかという「中身」について考えていきます。

インド人、日本人、そして英語圏の人々は責任概念が異なっており、それが各言語の他動性に反映されていると考えられます。

言語学だけでなく社会心理学的な手法を用いることで、研究の可能性も大きく広がりそうです。
(管理人)

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