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認知言語学:認知意味論の視点から

『言語と文化—言語学から読み解くことばのバリエーション』(くろしお出版)第2章を中心に、お話します。まず、前半では「遍く言語に適応しうると考えられる」言語の普遍性と、言語固有性・文化固有性について、「家族的類似性」・「階層分類」・「プロトタイプ理論」・「色彩分類」などを通して解説・検討します。後半では、言語普遍性と同時にそれと相対する概念、すなわち「異なる言語を話す者は、その言語の相違ゆえに異なったように思考する」と提唱するサピア・ウオーフ言語相対性仮説(Sapir-Whorf hypothesis, Whorfianism, linguistic relativity)を解説し、検証します。こうすることで言語固有性も考察します。具体的には、たとえば、日本語のように「本」「台」などの助数詞が顕著である言語を母語とする話者は、そうした助数詞の使用が相対的に顕著でない言語(例:英語)を母語とする話者とでは、「事象に対する概念が異なるかどうか」を考察します。さらに、「仮定法の時制の有無が概念に与える」研究という具体例を引用しながら、言語相対性仮説を支持する研究と、支持しない研究を中心に、認知言語学、特に認知意味論の視点から議論を進めます。
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1. 認知言語学:普遍性と固有性 1 [URL]

2012-11-26 17:19:49 ID:139

【本講義の内容】
・イントロダクション
・「人間発達・言語発達」
・「翻訳と認知」
[翻訳、オノマトペ、階層分類、認知・言語の普遍性からプロトタイプ理論までを概観します。]

【キーワード】
経験主義(empiricism)を提唱したイギリスの哲学者ジョン・ロック(John Locke),タブラ・ラーサ(ラテン語: tabula rasa 「人は白紙で生まれてくる」の意), 経験主義 vs. 生得(自然)主義(nativism),生得要因(heredity 生まれ) vs. 環境要因(environment 育ち)[注:ことわざ「氏より育ち」を想起されたい],アメリカ心理学,John B. WatsonやBurrhus Frederic Skinnerに代表される行動主義(behaviorism),言語生得説を提唱したNoam Chomsky,和製英語【例:「サヨナラ本塁打」 vs. walk-off homerun,「デッドボール」 vs. hit by a pitch,「フルタイムリーガルアシスタント」】

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 個物は個別性を有し、それは特殊と普遍との立体的統一として存在しています。
 言語についてもその本質を明らかにし個々の特殊性と言語としての普遍性を明らかにする必要があります。
 本質を脇に置き、単に形式や機能を比較、検討するだけでは本質、普遍性に迫ることは出来ません。
 これは、時枝誠記が国語学原論の総論で論じている所です。
 歴史的に見ても動物、植物の単なる分類学がいかに試行錯誤を繰り返してきたかはよく知られているところです。蝙蝠やペンギンやサンショウウオの分類を思いだせば明らかです。この点はエンゲルスの『自然の弁証法』が扱っています。■ 
2015-06-01 21:57:38 ヤグルマ”剣之助” / ID:45

なぜ現在地球上で6000以上とも言われる言語が話されているかについて興味があります。私の見解では、もともと一つの体系を持っていた言語が、人の移動に伴う環境の変化により、異なる言語が生まれていったのではないかと考えております。そこで興味深いのは、言語の類型です。「リンゴ」を「口にいれて咀嚼する」という行為を、日本語では「私はリンゴを食べた」(SOV)と表現するのに、英語では「I ate an apple.」(SVO)と表現する。この語順の違いの生起要因は、人の認知順序にあるのではないかと考えております。「言語」の面白い話を期待しております。
2014-05-20 10:19:06 フェルナンド / ID:41

2. 認知言語学:普遍性と固有性 2 [URL]

2012-11-26 17:22:55 ID:140

【本講義の内容】
・「言語普遍性と言語固有性」(1)
[人間言語に共通する様相・現象は単なる偶然なのか、それとも人間言語の普遍性を示唆しているのか、こうした問題を音象徴、前置詞・助詞、意味論から探ります。]

【キーワード】
翻訳,日英比較,英語における無生物主語(言語固有性),言語共通性【例:「滑らかさ」を表す/s/,「血縁関係ではなく非常に親しみがある男性の仲間」という意味での"­brother"(兄弟)】,時間を表す英語の前置詞/日本語の助詞),音象徴,言語接触

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3. 認知言語学:普遍性と固有性 3 [URL]

2012-11-26 17:25:53 ID:141

【本講義の内容】
・「言語普遍性と言語固有性」(2)
[日本語では、有声音(濁音)のオノマトペが無声音(清音・半濁音)のオノマトペよりも大きな音や激しい程度【例:ごろごろ vs. ころころ、ざらざら vs. さらさら】を表しますが、英語ではそうした有声音と無声音の対立の体系的使用は認められません。つまり、すべての言語が普遍的な音象徴を必ずしも同じように使っているわけ­ではないことがわかります。]

【キーワード】
言語共通性,「朝」の概念(ドイツ語 Morgen),認知文法,認知文法理論の創設者Ronald W. Langackerが唱える心理的な意味構築,construal(解釈・捉え方),認知言語学,比喩【例:感情の容器としてのカラダ),Mixtec(ミシュテカ:メキ­シコの原住民の言語[空間における参照物体の形状によって異なる語彙の使用]】,言語固有性【例:日本語のオノマトペ,有声[濁音] vs. 無声[清音・半濁音]】,音象徴

【参考文献】
Lakoff, George (1987) Women, Fire, and Dangerous Things: What Categories Reveal
about the Mind. Chicago: University of Chicago Press.

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 前置詞、助詞の共通性は正に言語表現の本質に関わる問題で、言語の本質は対象→認識→表現という過程的構造を持った表現であり、対象を反映しています。絵画表現や音楽表現が対象としての自然の同一性を反映しているように、言語表現も又、対象の共通性や人間の認識の共通性を当然反映している面とソシュールがシニフィエとシィにフィアンの結び付きの恣意性を指摘しているように共通性と恣意性という矛盾の統一としての側面をもっています。■
2015-06-01 21:56:30 ヤグルマ”剣之助” / ID:44

4. 認知言語学:普遍性と固有性 4 [URL]

2012-11-26 17:29:43 ID:142

【本講義の内容】
・「言語普遍性と言語固有性」(2)
・「認知の普遍性」(1)
[英語を母語とする子どもが言語習得の過程でbaggage(luggage)・clothing・furnitureなど「常に単数扱いの集合名詞」を複数にしてしまう­誤りをしないのはどうしてでしょうか、その理由を考えます。]

【キーワード】
ダジャレ,擬声語・擬音語・擬態語などのオノマトペや外来語を組み込んだ商品名,同音化(順行同化・逆行同化),異文化におけるスピーチスタイルの相違,階層分類(上位レ­ベル,基本・一般レベル, 下位レベル),認知的制約・経済性(経済効率),言語習得(核から周辺への拡張)

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 人が思考するときは概念の具体⇔抽象の間を登ったり、降りたりします。認知ではなく対象を認識し、今晩の夕食は何にしようかと考え、魚にしよう、刺身にしよう、鮪と烏賊の刺身にしよう等と具体の方に降りてゆきます。
 逆にニュートンは地球と太陽との運動、物体の落下という具体的な現象から万有引力という抽象的本質へ至る思考をしています。■
2015-06-01 22:28:22 ヤグルマ”剣之助” / ID:47

 命名はソシュールの言うように自由ですが、命名に当たっては既存の言語規範を利用し意志や目的に規制され命名することになります。
 落語でおなじみの寿限無や、岡本かの子のファンが自分の子供に「かの子」と名付けようとしたが、姓が「大場」で「大馬鹿の子」になるので諦めたという話はよく知られています。■

2015-06-01 22:26:01 ヤグルマ”剣之助” / ID:46

5. 認知言語学:普遍性と固有性 5 [URL]

2012-11-26 17:32:47 ID:143

【本講義の内容】
・「認知の普遍性」(2)
[日本語では粉雪・牡丹雪など下位・従属レベルに分類されている雪の種類が、エスキモー語・イヌイット語では縦に上昇し基本レベルになっていますが、その理由を天候・気候­などの環境要因から考えることから本講義を始めます。]

【キーワード】
階層分類【例:日本語とエスキモー・イヌイット語における「雪」の階層分類における相違と環境要因の関係】,認知的制約・経済性,認知普遍性(色彩の知覚),プロトタイプ­理論・典型事例【例:Ludwig Wittgensteinの
「家族的類似性」,「鳥らしい鳥」はどんな鳥なのか,「果物らしい果物」は何か,「野菜らしい野菜」は何か,女性の役割[婦人警官?看護士?フライトアテンダント?]】

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言語で表現するためには個物の在り方を一般化して表現する必要があり色彩の場合は、ある幅を設定し一般化して区別します。この幅は交通の要求を満たす範囲で設定すれば良く一般には虹の七色位の大雑把な区分で足ります。しかし印刷やデザインでもっと細かな区分が必要であれば色見本を作成し名前や番号を付けて区分することになります。
 さらに学問的には周波数、明度等を数値化することになります。
 異なる言語間では必要性に応じてこの区分のための幅が異なります。■
2015-06-02 13:16:08 ヤグルマ”剣之助” / ID:49

普遍性の認識は言語共同体の自然環境、必要性等に規定された自然発生的、歴史的なもの、つまり通時的なもので日本語では「水」と「湯」という単語がありますが、英語では「hot water」と二語になります。■
2015-06-01 22:41:22 ヤグルマ”剣之助” / ID:48

6. 認知言語学:言語相対性仮説 1 [URL]

2012-11-26 17:35:07 ID:144

【本講義の内容】
・「言語相対性仮説」
・「助数詞」
[剣道・柔道などの武道、野球やテニスなどのスポーツ、通信手段で用いられる助数詞「本」を例に取りながら、いったんプロトタイプが出来上がると、そこから概念が拡張され­てゆく事象を検討します。]

【キーワード】
日本語の助数詞(例:枚・冊・台),助数詞「本」のカテゴリー【例:細くて長いものに用いられる助数詞】,イメージ・スキーマ【例:剣道[プロトタイプ(核)】 →柔道[周辺]),軌道のスキーマ,通信手段としての「本」,年齢を数える「コ」

【参考文献】
Lakoff, George (1987) Women, Fire, and Dangerous Things: What Categories Reveal about the Mind. Chicago: University of Chicago Press.

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7. 認知言語学:言語相対性仮説 2 [URL]

2012-11-26 17:37:35 ID:145

【本講義の内容】
・「サピア・ウォーフ言語相対性仮説」
・「時制」(時間的距離 心理的距離感)
・「言語と文化」
[言語が認知的差異に直接的な形で影響を与えているのか、言語共同体が異なれば、外界は異なった形で概念化されるのか、それとも言語と文化が密接にかかわり合っていること­こそが重要課題なのかを考察します。]

【キーワード】
Edward Sapir, Benjamin Lee Whorf, 言語決定仮説(強い仮説),言語相対性仮説(弱い仮説),英語の時制 vs. 日本語の時制,時制のシフト,時制の心理的距離感【例:現在形と過去形の混在】,時制選択の基準(可動的な日本語 vs. 固定的な英語),日本語での数の数え方に認められる規則性

【参考文献】樋口 万里子・大橋 浩(2004)「節を超えて:思考を紡ぐ情報構造」大堀 壽夫編『認知コミュニケーション論』101-136 大修館書店.

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 人は対象を概念として認識し概念により思考するもので、その概念の交通を図るため一般化した概念に名前を付けたり、運用する規範を定め言語表現を生み出したものです。この規範は自然発生的であるため言語共同体ごとに差異が生まれます。
言語のない思考が存在しなければ神や万有引力や分子や電子、原子等の発見はありえません。言語を持たない猫や猿は自分を認識できない哀れな存在となります。■
2015-06-02 14:04:12 ヤグルマ”剣之助” / ID:50

8. 認知言語学:言語相対性仮説 3 [URL]

2012-11-26 17:41:26 ID:146

【本講義の内容】
・「時制」
・「分離基底言語能力(SUP)モデル vs. 共通基底言語能力(CUP)モデル」
[「中国語話者は、反事実を表す仮定表現に対し、英語話者ほど反事実とは解釈しない」というサピア・ウオーフ仮説を支持するAlfred Bloomの研究と、それに対して「中国語話者も反事実を表す仮定表現を完全に理解できる」とサピア・ウオーフ仮説を支持しないTerry Kit-fong Auの研究を対照させながら、言語相対性仮説を検討します。]

【キーワード】
単なる条件文 vs. 反事実を表す仮定表現,仮定法過去(If A was/were the case, then B would be the case),仮定法過去完了(If A had been the case, then B would have been the case) ,有標化,心理的顕著さ,Alfred bloom,Terry Kit-fong Au,サピア・ウオーフ仮説,分離基底言語能力(SUP)モデル vs. 共通基底言語能力(CUP)モデル

【参考文献】
Au, T. K. (1983). Chinese and English counterfactuals: The Sapir-Whorf hypothesis revisited. Cognition, 15, 155-187.
Au, T. K. (1984). Counterfactuals: In reply to Alfred Bloom. Cognition, 17, 289-302.
Bloom, A. H. (1981). The linguistic shaping of thought: A study in the impact of language on thinking in China and the West. Hillsdale, NJ: Lawrence Erlbaum Associates.

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 言語表現とは言語規範に基づく話者の認識の表現ですから第二言語が上手く話せない、聴けないというのは第二言語の言語規範が身についていないという事を表しています。

それは第一言語を身につけなければ親や他人とのコミュニケーションが図れず生きていけないため必死になりますが、第二言語の場合はそれ程の緊迫性はないため身につかないということでしかありません。ただし、教育方法が正しい理論的解明に支えられた適切なものであれば効果を上げますが現状は言語論自体が誤った不十分な状態にあります。■
2015-06-02 14:26:30 ヤグルマ”剣之助” / ID:52

 反事実の想定は否定表現に表われています。昨日は雨は降らなかった。というのは、一昨日には翌日は雨かと想定しましたが、実際には昨日は雨が降らなかったのを今日回想している文です。一昨日の想定は事実に反しています。又、「今日は花が咲かない。」というのは「花が咲く」と予想していたが実際には咲かなかったという反事実の想定を否定しています。■
2015-06-02 14:25:21 ヤグルマ”剣之助” / ID:51

9. 認知言語学:言語相対性仮説 4 [URL]

2012-11-26 17:43:12 ID:147

【本講義の内容】
・「能動態・受動態」
・「言語と文化」
[「異なる言語を話す者は、その言語の相違ゆえに、異なったように思考する]と主張する言語相対性仮説(サピア・ウォーフ仮説)を再考し、「概して、異なる文化は異なる言­語を所有しているので言語機能としての思考と行動における文化間の相違と類似性を理解するのは重要だ」という視点からサピア・ウォーフ仮説を捉え、様々な現象を検討します­。]

【キーワード】
Niyekawa-Howard,間接受動表現,ステレオタイプ, (音形)のないゼロ代名詞,言語相対性仮説,サピア・ウォーフ仮説

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 日本語で代名詞や主語や他の語が省略され易いのは日本語の膠着語としての裸体的性格という言語の特殊性によるもので、個人主義の程度が低くなる傾向とは関係ありません。

 屈折語としての英語は文型がSVOのスーツケース型となっており、規範として許されないないためです。話者の認識としては同一であり、日本語が多様な敬語を生み出すのもまたこの言語の性質の相違に起因しています。これをイデオロギー的な解釈に結び付けるのは誤りです。■
2015-06-02 14:41:49 ヤグルマ”剣之助” / ID:53